■2005年09月13日(火)11:16
『脳死・臓器移植の本当の話』
|
『脳死・臓器移植の本当の話』(小松美彦、PHP新書、2004) これまで私は、脳死患者からの臓器移植については何となく賛成だったわけだが、これを読んだあとでは、それほど単純には賛意を示すことができなくなる。
著者の主張は、脳死は決して死ではない、というものだろう。交通事故などで全身システムに重大な損傷を受けたのでなければ、身体の各臓器は比較的に有機的統合性を保ち続けうる。その結果、「脳死」は必ずしもすぐに死ぬわけではなく、脳死状態にあっても、数週間から長い者では十数年生き続ける。妊婦の脳死者が子を出産した例もあり、また脳死者に意識がないのかどうかもまだ不明確(意識の有無の主張については若干著者の思い入れが強い気がするが)だという。ラザロ徴候等、脳死患者が動きをしめすという事実にも驚かされる。
人工呼吸器等の処置を施している限り生き続けるのであれば、その患者から臓器を取り出すというのはグロテスクに思われる。臓器を取り出すということは、必然的にその脳死患者を殺すことになる。臓器移植に新鮮な臓器が最適だとしても、脳死患者からの臓器移植、少なくとも患者本人による明確な意志のない移植には賛成できない。 | | |