■2005年05月30日(月)11:24
『中華帝国の崩壊と拡大』
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『中国の歴史05 中華の崩壊と拡大』(川本芳昭、講談社、2005) 『中国の歴史』シリーズも第5巻、ついに五胡十六国〜南北朝時代にやってきた。「中華」の概念を考える上で非常に面白い時代である。副題にあるように、中華は崩壊してしまったけれど、しかし拡大してしまうのである。どういうことなのだろうか。
中国の周辺にはさまざまな異民族がいたけれど、彼らが中華に融合してしまう。例えば西晋の崩壊後、山西の地に「漢」を名乗る王朝が建つが、その創始者劉淵は、実は匈奴のリーダーなのである。同様に、晋・漢代には「異民族」とされていた連中が、続々と中華の領域に入ってきて、中国風の名前を名乗っては中国風の王朝を建ててしまう。後にこの混乱を治めて中国を統一する隋・唐もこの系統なのである(だったはず)。まさに、中華は崩壊してしまうが、異民族を取り込んで拡大してしまうのである。
それはともかく、この時代、あまり長続きしない王朝が多く、しかも中国は広いから、色んな地域に同時にいくつも王朝が建つのでとてもややこしい。そんな時代が数百年続く。さて、この本は、この混乱の時代を書いているのだが、残念ながら、ちょっと分かりにくい。最初のほうに各王朝の興亡表が置かれているが、これもあまり分かりやすい出来ではない。まあ、分かりやすく書く方が難しい時代なので、読む方にもちょっとは努力が必要だろう。何か資料集か、あるいはネットで年表でも探してきて、さらに歴史地図を横に置きながら、じっくりと読んでいこう。 | | |